栞を今 ここに挿してしまえたら
きれいな音楽だなと思っている。
幸せや温かさを知ってしまって、
それを反芻しながら真夜中の部屋にひとり、
温かい気持ちとそれを失ってしまうかもしれないという恐怖が降りかかって来てぼうっと浸っているような情景が浮かんでくる。
でもどこか悲観しているようには感じなくて。
なるようにしかならないというような、
諦めに似た気持ちを感じる。
人の気持ちは移ろうものだから自分がどうもがこうが変わってしまうものだから。常に良いバランスを保つことができたらどれだけいいだろうか。それが出来たら関係が壊れる事もないのに。
今の自分の気持ちに、今自分に注いでくれている想いに縋りたくて。
だから今この瞬間に栞を挿してしまいたい。ここで終わってしまいたい。変わってしまって失うことは怖いから。
夜空を見ていると宇宙のその途方もない広さに打ちひしがれてしまうことがある。
愛の大きさや人の気持ちの大きさには際限がないから、そんな途方もなく広い宇宙のようにこの気持ちが大きく広がってしまったら?
さらに想いが大きくなり、きっと自分では抱えきれないほどの想いに心がパンクしてしまう。溢れ出てバランスが崩れてきっと関係も壊れてしまう。
自分の気持ちが大きくなって抱えきれなくなってしまうのも、相手の気持ちが大きすぎて受け取りきれないのも、逆にお互いに気持ちがなくなってしまうのも、本当に恐怖で不安で。
宇宙に包まれてふわりと地面から浮いてしまうみたいに、気持ちは掴みどころのないものだから。
だから何か保証が欲しいと願ってしまうんだろうな。
だけどそんなことは確実には出来ないから、終わらせてしまいたい衝動と向き合いながらこれからも愛を浴び続けて、自分も想いを育て続けてしまうんだろうな。
そんなことを考えながら聴いていた音楽。